熊本地震に学ぶ2(熊本視察編)第2日目

熊本地震に学ぶ2(熊本視察編)第2日目

  日時:2017年5月21日(日) 終日

  場所:川尻町 新町古町 熊本城

 

今回は2日間で多くの現場の視察を詰め込みすぎた感もありますが、各地で活動される方々のお話を聞けた事は大変参考になりました。キーマンのお話の中で共通していたのは、各地にネットワークを持っていたことが役に立ったとのことでした。新建も全国組織、いざというときに繋がれるようにしていきたいと思います。

川尻町の状況:古川設計室

A.[川尻町の視察] 川尻町を中心に住宅や施設の復旧を積極的に行なわれている[住まい塾 古川設計室:古川様]の事務所にお伺いして、まずはスライド等にて今回の震災の特徴等を伺いました。その後徒歩で川尻公会堂や米蔵、そして瑞鷹酒造の被害や復旧の状況を視察しました。昼食は増築を設計された地元で有名な鰻料理店の若松屋で取りましたが、人気店とのこともあり満席状態でした。熊本市内への道すがら、南高江や近見等の地盤沈下の現場等を視察しましたが、電信柱の未だに沈下したままの状況を目にし、液状化対応の難しさを感じました。

 

新町古町と熊本城の状況

B.[熊本市内の視察] 熊本市内の中心部で、古くよりの城下町の趣も残す新町古町の復興について[くまもと新町古町復興プロジェクト:吉野事務局長様]にお話を伺いました。解体の進む古民家の保存や地域のコミュニティ再生への取組を語って頂き、現地を視察しました。

 最後には、熊本地震で大きな被害を受けた熊本城の復旧現場を見に行きました。被災した天守閣の上部解体の準備のために足場が掛けられている状況でしたが、今後の復興のシンボルとしての再建の現場を見て、少しばかりの元気ももらいました。

 

<熊本地震に学ぶ2(熊本視察編)> に参加して           建まち編集委員長 鎌田一夫 2017/05/29

 

福岡支部の皆さん、現地で説明 をして下さった皆さん、お世話になりました。大変 充実した被災地視察が出来ました。

参加者としての感想・意見をお伝えすべきところ ですが、東日本大震災以来様々な状況に出会って、頭が整理できていません。ここでは、懇親会でお話 しした考え方を敷衍するだけにしておきます。とはいえ、東京や千葉で熊本の状況を説明し、「建 まち」誌の編集などでは今回の視察を活かしたいと 思っているので、ご了解ください。

 

先日お話ししたように、私は「災害」とは天変地 異とそれによる人間社会の被害の複合と考えていま す。天変地異の強度と被害の大きさの関係が問題ということです。

例えば、東日本のような巨大津波に対して力づく (ハード)で被害を食い止める<防災>は無理だか ら、一定の被害はやむを得ないとして避難など(ソ フト)で人命は守という<減災>という考え方が提 起されています。天変地異があまりに強い時に、被 害の極小化だけを狙うのは無謀だということです。ところが、熊本地震に関して「建築雑誌」の座談 会(174 月号)で構造家・金箱温春氏と構造学者・ 和田章氏とで次の遣り取りがあります。

 

金箱よく調べてみると、本震の前日(4月15日)にもM6.5 の地震がありました。前震と呼ばれている 4 月 14 日の地 震とほぼ同じマグニチュードです。通常は、2 回目以降は 弱まった余震となるのですが、今回は間隔の空いた大きな 地震が繰り返されたということになります。そうした地震へ の対応には、耐震設計というハード面だけでなく、地震が 繰り返される可能性を前提とした避難など、ソフトな面を考えた方が有効だと思います。

和田:今回二つの断層が別々に動いたという説明でした が、地震発生時にはそのようなアナウンスはありませんで したし、現在も地震のメカニズムが解明されている訳では ありません。明日起きるのか 1 週間後に起きるのかわから ない地震という現象に対して。ソフトだけでは対応できませ んので,やはり丈夫な建物をつくるしかないと思います。

 

和田先生はソフトな対応が機敏に出来るのかと危 惧されています。そして、千年周期の地変はともか く、日本全体では数十年周期で起こり得る地震に対 してはもう少し耐えられなかったのか、という思い もあるようです。

少し図式的ですが、<防災=ハード>と<減災=ソ フト>をどう組み合わせるか、東日本に加えて熊本 を経験した私たちの課題ですね。仮設住宅は東日本 に比べて随分よくなっています。教訓を生かした積 み重ねが様々な場面で求められています。

 

 

それにしても原発事故は、天変地異の強さに係わら ず被害が甚大で深刻なことに加えて、TP15mの津 波を予測しながら対策しなかった点で、二重に、完 全にアウトですね。